「観音(人々の声を広く聞き、見る)菩薩(修行中の仏さま)」の一種。
菩薩の中でも「観音菩薩」は求められればどんな姿にも変わって人々を救うという象徴的な意味を込めて33の姿に変身できると言われている仏さまで、勢至菩薩と共に阿弥陀如来のそばで脇侍(わきじ)を務め、阿弥陀三尊像をつくります。
お釈迦さまが悟りをひらくまえの王子さま時代をモデルにした菩薩の姿ですからまだ修行中ですし、悟りの境地に至った如来よりも人間に近く、親しみやすい存在です。
十一面観音菩薩は正面の顔の他に頭の上に10もしくは11の顔をもっています。この顔で世の中の困っている人のことを絶対見逃さない、360度のあらゆる方角を常に見て、衆生のどんな苦難も見逃さないという意味です。
また、観音菩薩としての特徴は頭に阿弥陀如来の化仏が装飾されていること。これは、阿弥陀如来が自分の身分を隠して観音菩薩になったとされているからです。
悟りの境地にある「偉い」如来より、まだ悟りには至らない姿の菩薩姿の方が人間に近い存在で、親しみやすいだろうと、姿を変えてより近くで救済してくれる仏さまが観音菩薩というわけです。また、蓮の花や水瓶を持っていることも観音さまとしての特徴です。
普通、十一面観音の頭の上の顔には五種類の表情があります。
・頭頂に仏頂面(ぶっちょうめん)1面、
・頭上の正面側に菩薩面が3面、
・仏像の左の頭部に瞋怒面(しんぬめん)が3面、
・右の頭部に狗牙上出面(くげじょうしゅつめん)3面、
・拝観者からは見えない後頭部に暴悪大笑面(ぼうばくだいしょうめん)1面
究極的理想としての悟りの表情で無表情のように見えるのですが、菩薩面は穏やかな慈悲の表情を見せ、瞋怒面は眉をつり上げ、口を「へ」の字にして邪悪な衆生(迷える人)を戒めて仏道へと向かわせる怒りの表情。狗牙上出面は牙をチラリと見せて、おこないの良い衆生を励まして仏道を勧めます。
そして、信じられないような表情の暴悪大笑面。悪への怒りが極まるあまり、「悪いことはみんなお見通しだ、ばかばかしい! わっはっは」と人の悪行について大口をあけ歯を見せ、笑い飛ばす表情は強烈なインパクト。本来の観音さまのイメージ作りを考えると、見えにくい背面に配置されるのも納得です。
十一面観音菩薩のご利益には、生きてる間にもらえる現世利益と死んでからの後世利益という二種類があります。十一面観音菩薩のご利益は十種勝利と四種果報。
10種類の現世利益(病気から守る、不慮の事故から守られ螺宇、財産や食事の心配がないなど)と4種類の後世利益(臨終には如来に会える、地獄に生まれ変わらない、早死にしない、極楽浄土に生まれ変わる)の計14種類と幅広いご利益があります。
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