表題は性霊集一 喜雨の歌からの引用です。「生まれては喜び、死に逝きては悲しむ流転の人生である。」
誰しもが人として生きていく上で必ず心の中に闇を抱えています。それはお釈迦様のおっしゃられた「四苦八苦」であると言えます。(下記参照) 私自身が一番大変な「苦」だと思っているのは「生苦」です。他の七つの苦は生きていく上で理解することができ、それに対応する気持ちや心構えが形成されていきます。しかし、「生苦」の「生まれる場所、時代、条件を選ぶことができない」というのは心構え云々という枠を超えています。
そこで考えを改めて「なぜこの時代、この場所に生まれてきたのか」を考えてみました。必ず成すべき何かがあるだろうと考えたのです。
「まずは自分の両親の子として生まれてきて、両親に私が生まれたことの喜びを与えた。そして私が成長していく様子をいっしょに喜んだ。時にはわがままを言って困らせることもあったけどそれも今は良い思い出。そして最後に子供の私が親を看取る」。
当たり前のことに思えるかもしれませんが、親にとって子供は太陽のような存在です。日常の中に差し込む光明だとも言えます。たとえ辛い環境や境遇の中にいても、子供の顔を見るとそんな闇の部分が吹き飛んで行ってしまいます。つまり、私がこの時代・この国・この家庭に生まれてきたのは、自分自身の両親の子として家族の一員となり、知り合うすべての人たちと苦楽を共に生きていき、そしてお互いが闇の部分を照らす光明として影響を与え合う、本当に当たり前のことですがそれが答えだと私は思っております。周囲を見渡してみてください。一人ではありません。一人だと思っているのは自分自身の闇の部分です。隣にいる人に一声かける、それだけでも十分に光明となります。
同様に仏教の教えも人の心の闇を照らして、迷いを晴らすものです。四苦八苦を受け入れるために「八正道」が存在しております。仏教の一番の基本は苦しみを受け入れるところから始まります。克服ではなく受け入れることです。次に苦しみを受け入れてどういう人間として生きていくのか、一番わかりやすいのが「十善戒」です。「不殺生」「不偸盗」「不邪淫」など人間として生きていく上で守るべき十の戒めが説かれています。そして、ありのままの自分を愛しながら、精進し続けることの大切さも教えてくれます。
「一切皆苦」、全てのものは苦しみであり、人生は思い通りにならないということをまずは受け入れてどう楽しく生きていこうか考えよう、ということから始めてみてはいかがでしょうか。
四苦八苦
・生苦 - 衆生の生まれることに起因する苦しみ。
・老苦 - 衆生の老いていくことに起因する苦しみ。体力、気力など全てが衰退していき自由が利かなくなる。
・病苦 - 様々な病気があり、痛みや苦しみに悩まされる仏教問題。
・死苦 - 死ぬことへの恐怖、その先の不安などの自覚。衆生が免れることのできない死という苦しみ。また、死ぬときの苦しみ、あるいは死によって生ずるさまざまな苦しみなど。
・愛別離苦(あいべつりく) - 親・兄弟・妻子など愛する者と生別・死別する苦しみ。愛する者と別離すること
・怨憎会苦(おんぞうえく) - 怨み憎んでいる、どんなに嫌な者とも会わないといけない苦しみ
・求不得苦(ぐふとくく) - 求める物が思うように得られない苦しみ
・五蘊盛苦(ごうんじょうく) - 五蘊(人間の肉体と精神)が思うがままにならない苦しみ
八正道
・正見(しょうけん) - 正しい見解、人生観、世界観。
・正思(しょうし) - 正しい思惟(しい)、意欲。
・正語(しょうご) - 正しいことば。
・正業(しょうごう) – 正しい行い、責任負担、主体的行為。
・正命(しょうみょう) - 正しい生活。
・正精進(しょうしょうじん) - 正しい努力、修養。
・正念(しょうねん) - 正しい気遣い、思慮。
・正定(しょうじょう) - 正しい精神統一、集注、禅定(ぜんじょう)。
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