すべての根源とは?

お大師様が残された言葉の中に下記のようなものがあります。
弌阿(いちあ)の本初性真の愛を吸うて始め無く 金蓮の性我本覚の日を孕(はら)んで終り無し(性霊集七 笠大夫先妣)
【阿字にはすべての根源である仏の慈愛が含まれている。金色の蓮華にいます仏は智慧の光明を果てしなく放っている。】
「阿」という文字を単純に使用されていますが、「阿」とは一体何なのでしょう?それに言葉の意味をパッと見ただけでは何のことを言っているのかわからないと思います。「阿」とは一体何なのか、それが分かればすぐに理解ができると思います。
日本語の50音で一番始まりの文字は「あ」です。それは日本人ならすぐに理解できると思いますが、では他の国の言語ではどうでしょう?英語ではアルファベットの「A(エイ)」が一番最初にあります。ドイツ語のアルファベットも読み方は少し違いますが表記は英語とほぼ同じで「A(アー)」から始まります。英語もドイツ語もどちらも日本語読みにすると「ア」となります。このように「あ」から始まる言語というのは実は数多く存在しています。そして、梵字の「阿」も始まりを表す言葉であり他のすべての梵字の基本となっております。それはなぜか?それは全ての始まりでありすべての中心となる仏様「大日如来」を表しているからです。
大日とは「大いなる日輪」という意味で、真言宗では大日如来は宇宙の真理を現し、宇宙そのものを指します。そして、すべての命あるものは大日如来から生まれたとされ、釈迦如来も含めて他の仏は大日如来の化身と考えられています。 このことを踏まえてお大師様の言葉に当てはめると、とても理解しやすくなります。
「大日如来」という言葉をあてはめた文章で記載してみます。
「阿字にはすべての根源である大日如来の慈愛が含まれている。金色の蓮華にいます大日如来は智慧の光明を果てしなく放っている。」
実は、以上の内容は全て私の師僧からの受け売りですが、ある一つの物を理解するにはその根源を知ることで見えてくることを私は学びました。まるで辞典で調べると次から次へと調べてしまうように、一つのことを深堀するのはとても面白いことだと私は思っております。

真言宗 光堯庵 (ひかりぎょうあん)

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